2021年12月24日 公開
和瓦は火災保険が活用できるのか?自然災害を受けたときの対策をプロが解説します!!
住宅を新築する時やリフォームの際に、どのような屋根にするかはかなりの悩みどころです。今、流行りなのはガルバリウム鋼板を使った軽い屋根ですが、海外っぽいデザインで人気の洋瓦もあります。
そして、忘れてはいけないのが日本の伝統工芸でもある和瓦です。そこで今回は、この和瓦にはどのような種類があり、その特徴や修理方法について紹介していきます。
和瓦とはどのようなものか
日本風の瓦といえば「和瓦」や「日本瓦」という名前を聞いたことがあるかもしれません。しかし、実はこの2つの瓦はまったく同じものです。和瓦は正式名称を「J形瓦(ジェーがたかわら)」といいますが、この「J」は「Japanese」の「J」の略です。
この正式名称は、1996年にJIS(日本工業規格)が改定された時に決まった名前で、現在はこの呼び名が一般的となっています。つまり「和瓦」「日本瓦」「J形瓦」は呼び方こそ違いますが、すべて同じ和瓦なのです。
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和瓦の特徴と種類
それでは、この和瓦の特徴と種類を紹介していきましょう。まずは4つの特徴です。
特徴①塗装をしなくても風合いがある
和瓦の表面には、釉薬(ゆうやく)が塗られているものと塗られていないものがあり、その風合いが違います。
釉薬が塗られている和瓦は、表面が塗料をはじくのでうまく塗装ができません。釉薬が塗られていない和瓦は、他に同じものがないような独特の風合いを持っています。そのため、その風合いを生かすためにも塗料は不要と考えておきましょう。
特徴②メンテナンス不要の耐久性の高さ
和瓦は、粘土を高温で焼いて作られます。焼成する過程で、和瓦は粘土から陶器に変化していきます。
そのため耐久性が強化され、100年はもつといわれています。何かしらの外部要因により大きな衝撃を受けない限り、メンテナンスは不要です。
特徴③ほかの屋根材と比較して重い
和瓦の重量は約45kg/㎡(平均値)ですが、スレートは約24kg/㎡(同)でガルバリウム鋼板にいたっては約4kg/㎡(同)まで軽くなっています。
和瓦はほかの屋根材よりも2~10倍近い重さがありますので、住宅の高い部分が重くなってしまいます。結果、耐震性が低くなるというデメリットがあります。
特徴④勾配がきつくなるのでコスト増
ここでいう勾配とは屋根の傾斜角度のことです。この傾斜角度は、素材ごとに建築基準法によって最低勾配が決められています。和瓦は4/10以上で、ほかの素材の3/10以上または1/10以上といった規定よりきつい勾配となっています。
勾配がきついほど雨漏りはしませんが、施工費用は高くなってしまいます。
次に種類を見ていきましょう。
種類①釉薬瓦
粘土を瓦の形に成型してから、乾燥させます。
そして、ガラス質の釉薬を表面にかけて焼いて作るのが釉薬瓦です。釉薬の成分の違いで、さまざまな色に変化するのが特徴です。
種類②いぶし瓦
釉薬は使用しないで、焼いた後にできる限りの空気を遮断して製造するのがいぶし瓦です。
空気を遮断していぶしの効果を得ますが、瓦の表面の炭素が膜を作るため、その瓦固有の独特の風合いのある仕上がりとなります。
和瓦にはこのような特徴・種類がありますが、基本的には野地板の突起箇所に引っ掛けながら一部が重なるように屋根に設置していくものです。目に見える部分の寸法は、縦が7.4寸(約22.2センチ)で、隣の和瓦と重なる部分を含めると8寸(約24センチ)となり、この大きさの和瓦を重ねていって、重厚感のある屋根を作り出します。ちなみに、以前は成分が大きく違った洋瓦も、和瓦に似た成分の製品が増えました。和瓦と洋瓦の違いは「形状だけ」というのが現状です。
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和瓦の修繕方法
和瓦は100年近くメンテナンスが不要という、耐久性の高さが特徴の屋根材です。しかしながら、これは経年劣化が少ないというだけで、外部からの大きな衝撃があった場合はひび割れが起こることがあります。
猛烈な台風や大雪、そのほか何かしらの大きな衝撃を受けた時は、どんなに丈夫な和瓦でも割れたり剥がれたりしてしまいます。
このような自然災害が起きた時は、和瓦が割れる・欠ける・剥がれるなどといった被害がでることがあります。その被害を受けた部分から雨水が浸入してしまうと、まず雨漏りが起きます。そして、対処せずに放置しておくと、基礎部分が雨水で腐食してしまいます。このように、雨漏りは放置しておくと住宅全体に大きなダメージを与えてしまいますので、すぐに対処する必要があります。
ちなみに、和瓦の屋根で雨漏りが発生している時は、和瓦が割れたことが原因になることがほとんどですので、すぐに専門業者を呼んで屋根を確認しましょう。
この際、自分自身で屋根に上りチェックすることもできますが、高度での作業になりますし危険が伴います。また雨漏りの原因の追究は、プロでも難易度が高いといわれていますので、専門業者に依頼することをおすすめします。
そして、屋根の漆喰の劣化も危険な要素といえます。屋根の漆喰とは、和瓦と和瓦の接着剤のことで、隙間を埋めて雨や風から住宅を守っています。
この漆喰は、一般的な戸建住宅のほとんどで使用されているものですが、特に屋根の漆喰は、雨や風、そして直射日光にずっと晒されているために経年劣化が激しくなってしまいます。
劣化が進むと、漆喰の崩れ・剥がれなど雨漏りの原因となる事象が発生します。そして、漆喰の崩れ・剥がれを放置してしまうと、和瓦自体がしっかり固定されていない状態になり、和瓦が屋根から落下するリスクが高くなります。
和瓦のメンテナンスは不要なはずだが…
和瓦自体は耐久年数が長いためメンテナンスは不要というのが売りですが、自然災害による被害や和瓦の漆喰部分の経年劣化に関しては修理・メンテナンスが必要になります。では、どのようなメンテナンスをすればよいのでしょうか。
まずは、交換です。和瓦の一部が割れていたりひびが入っていたりする場合は、和瓦を交換して対処します。壊れてしまった和瓦を外して新しい和瓦を設置する簡単な工事ですので、コストパフォーマンス的には全体の交換よりは安くなります。
和瓦の工事でもっとも大規模になるのが、葺き替え工事です。これは、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材を設置することになるので、コストも工期もかかります。
しかし、このリフォームのタイミングで和瓦から金属素材に変えるケースも少なくなく、この場合は和瓦の屋根で葺き替えるよりも安くなります。
工事費用は業者や施工方法によって違いがあるため、複数の業者に見積をお願いする「相見積」で相場を確認することをおすすめします。ちなみに、見積自体は無料で行っている業者がほとんどですので、見積を有料にしている業者は悪徳業者の可能性があるので避けましょう。
ラバーロック工法はおすすめできない?
このように、和瓦は塗装する必要がないので数年に一度の塗装メンテナンスは不要ですが、自然災害により被害が出てしまうケースはあります。特に毎年台風が上陸する地域は、漆喰へのダメージが大きくなるので、定期的なメンテナンスは欠かせません。
このような地域では、業者から「ラバーロック工法」と呼ばれる方法を薦められることがあるかもしれません。この工法は、シーリング材で和瓦自体を固定するもので、すべての和瓦をシーリング材でつなぐので、地震時や強風時に落下しにくくなります。
実はメリットはこれだけで、ほかはデメリットが多いのが特徴です。例えば、年数が経過するとシーリング材の汚れが目立つようになります。そして、工事自体が非常に高額であること。
材料はシーキング材のみで1日もかけず終わる工事ですが、なぜか数百万円の施工費がかかります。なぜかというと、このラバーロック工法は訪問営業をしている悪徳業者がよく薦めてくる工法といわれています。
適正な価格は、一般的な一戸建ての場合は20~30万円前後ですので、かなり「吹っ掛けてきている」ことがわかります。
そして、そもそも住宅自体が瓦を固定した時に、地震の揺れに耐えられるかどうかわからないという問題もあります。瓦屋根の住宅は、その屋根の重さを考慮して建設されますが、和瓦全体を固定することを前提としていないため、大きく揺れた時にどうなるか分からないのです。
特に、建築基準法が改正された1981年以前に建てられた住宅の場合は、より危険性が高くなります。
また、ちょっとした補修をしたい時もシーリング材を除去する必要があります。つまり、優良業者なら薦めることのない屋根の改修方法が、ラバーロック工法なのです。
工事費用負担なし?火災保険の活用術
台風や大雨などの自然災害や、何かが飛来・落下してきて和瓦に被害が出てしまった時は、すぐに工事をする必要があります。このように、自然災害や不可抗力により和瓦に被害が出た時は、火災保険を活用して修理することができることをご存知でしたか?
火災保険は、火事以外にも自然災害による被害を補償してくれる総合保険です。また、オプションで不可抗力により被害の補償もつけることができます。火災保険の補償対象となるような屋根の被害は、足場を組んで修理することがほとんどですが、数十万円という浅井馬代も火災保険で賄うことができます。
しかし、この火災保険はなかなかクセのある保険ですので、火災保険の活用に慣れている専門業者に依頼することでスムーズに進めることができます。火災保険請求相談センターはどのような被害であれば火災保険がおりるのか、どのように申請すれば満額に近い保険金を得られるのかなどのノウハウを持っています。
カバー工法などを考えている方も火災保険が使えます
最後に、余談になりますが和瓦以外の屋根の火災保険の活用方法も紹介しましょう。今、施工件数が多くなっているのが「カバー工法」と呼ばれる屋根のリフォームで、既存の屋根材の上に金属屋根を重ね張りするものです。
この中で、特に利用されていたのが、スレートの一種であるコロニアルです。コロニアルというのはスレートの商品名の一つですが、非常に軽くコストパフォーマンスが良いことから、和瓦屋根が主流だった1960年代以降の日本において一気に普及しました。
しかし、色褪せが激しいというデメリットがあり、10年に1度は塗装工事が必要といわれていて、和瓦とは違いメンテナンス費用が相当かかってしまいました。このコロニアルの改修工事の方法としては、和瓦と同様に葺き替えがありますが、屋根をはがす作業になりますのでコストも時間もかかります。そこで開発されたのがカバー工法です。
この工法では、もともとあるコロニアルの上に軽量の屋根材を張ることで補修を行いますので「重ね葺き」「重ね張り」「被せ張り」という別名で呼ばれることもあります。上に重ねる屋根材として最もスタンダードなのは、超軽量な屋根材である成型ガルバリウム鋼板です。
このカバー工法のメリットとしては、屋根材を撤去する人件費・廃材処理費がかからないことです。このメリットによって、相当なコストダウンが見込めます。
また、金属屋根の裏面の断熱材が効果を発揮するため、断熱性・防音性・防水性が向上することも期待できるというメリットもあります。工事の内容としては、金属を貼るだけという簡単なものですので、養生が不要で工期の短縮にもつながります。目安として、屋根を張り替える葺き替え工事の約半分の日数で修理が終了しますので、その分費用も安くなります。
また、公害問題の心配もなくなります。実は、2004年以前に製造されたコロニアルを含むスレートには有毒なアスベストが含まれていることが多く、葺き替え工事の場合はこのアスベストが飛散するというリスクがありました。
病原体になるリスクの高いアスベストを含んだ屋根材の使用・製造・販売は、現在では禁止されていますので、2005年以後に製造されたスレートにはアスベストは含まれていません。実は、アスベストの撤去には特別な資格が必要で処分費用も安くないので、それらが不要なカバー工法が人気を集めています。
しかし、カバー工法で修理を行った後に雨漏りをしてしまった場合は、カバー工法で新たに張った屋根だけでなく、ともともとの屋根材まで工事をすることになるため、多額な費用がかかってしまうリスクがあります。
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記事監修:矢島 弘子 |
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火災保険請求・地震保険請求アドバイス業務に従事。年間200棟の調査を13年間継続して行い、建物調査後の損害鑑定人との立ち合いや交渉も行っている。外部の敷地内の申請はもちろん室内の汚損・破損の申請や給排水設備の申請も得意とし、家財保険かけている方が知らないスーツのアドバイスなども行っている2021年10月7日の地震被害はあり、関東圏であればどこでも無料点検はすぐにご依頼ください。損はさせません。 |