2021年12月20日 公開
ビニールハウスが強風被害を受けたとき火災保険は活用できるのか?住宅じゃなくても保険が使える!?
去る 2021年(令和3年)、日本には多くの自然災害が発生しました。住宅への被害はもちろん、産業・経済への影響も大きく、とりわけ、農業が受けるダメージは深刻です。
簡易なビニールハウスは台風により全壊・大破してしまうことが多く、しっかり対策をとる必要があります。
さて本題ですが、「ビニールハウスが台風などの被害を受けたときに、それを補償する保険はあるのか?」についてですが、あります。
民間の保険会社やNOSAI(農業共済で、施設園芸共済の対象にハウスがあります)などがそれにあたります。
【民間の保険会社の例】
民間の保険会社であれば、企業総合保険であれば事業に関する建物・財産が補償対象となり、屋外設備装置、これがハウスに当ります。火災や落雷、破損や風災・雹災・雪災・水災もカバーしております。
参照)東京海上日動火災 企業総合保険HP
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/zaisan/kiso_zaisan/hosho/songai.html
【NOSAI(農業共済)の例】
園芸施設共済というものがあり、園芸施設が損害を受けた場合に補償されます。また共済加入のオプションとして、附帯施設、施設内農作物、撤去費用、復旧費用があるようです。
この共済も対象となる災害に、“風水害、ひょう害、雪害その他気象上の原因による災害”と明示されているので、台風被害の補償に加入のご検討をされるのもよいでしょう。
もし、上記民間の保険会社の保険に入っている場合には、ご加入の保険で、ビニールハウスの修繕や、補償内容によってはその他、被害を受けた近接施設(住宅など)の修繕も行えるかもしれません。
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ビニールハウス、被害の特徴と対策
ビニールハウスの補強対策として大切なのは、しっかりとした構造計算を行い、風速50 m/s 以上の強風に耐えられるような仕様にすることです。
そのためには、基礎・柱・屋根材などを厳選する必要があります。
また、現在使用しているビニールハウスがそこまでの強度がないのであれば、自然災害に強いビニールハウスなどの、導入の検討が必要です。
建設コストがかかってしまいますが構造がしっかりとしている屋根型鉄骨ビニールハウスや低コスト耐候性ビニールハウスなどの使用が考えられます。
一般的なビニールハウスは、風速 30m/s以上の風速には耐えられない構造となっています。
そのため、台風がやってきた時には多くの場合で被害が出てしまいます。
しかし、ビニールハウスの被害状況には一定の傾向があることから、どのような補強が必要なのかを考えることが可能です。
コストパフォーマンスを考慮しながら、施設の被害を最小限に食い止めるためには、施設の立地条件や台風時の風向き・周辺環境などを総合的に分析して、効率的で局所的な補強をすることが有効になります。
では、具体的にはどのような補強・対策ができるのでしょうか。
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風上側の肩部分から屋根にかけて押しつぶされた状態になってしまう場合
強い台風による被害で多く見受けられるのは、風上側から大きく押しつぶれたような状態になっているビニールハウスです。
これは、ビニールハウスの風上側の肩の部分に大きな負荷がかかってしまうために起きる現象です。
特にビニールなどの被覆資材が破れない場合はアーチパイプが大きく湾曲してしまうことから、ビニールハウス全体が倒壊してしまうリスクが大きくなります。
被覆資材が破れない素材の場合は、アーチパイプが内側に湾曲してしまう被害が多く、逆に被覆資材の一部が破れた状態でビニールハウス内に強風が吹き込んだ場合は、アーチパイプが外側に湾曲してしまいます。
一方で連棟のビニールハウスの場合には、風上の棟に被害が出ていても2棟目以降は被害がないケースも多くありました。
このような被害の対策のためには、タイバー(地面に対して並行に設置する補強具)やⅩ型を使用した肩部の補強や浮き上がり防止のアンカーなどの設置、アーチ構造の骨材の組み込みなどを行います。
下から吹き上がるようにパイプが変形してしまっている場合
単純に雨よけのためだけにビニールハウスを使用する場合、側面がない構造のビニールハウスを使用することがあります。
また、ビニールハウスの出入り口が破損し、内部に強風が吹き込む可能性があるビニールハウスの場合、台風が来た際には内側から外側に向けて風圧が高まってしまう可能性があります。
ビニールハウスが上方に浮き上がるように持ち上げられたり、アーチパイプが内側から外側に跳ね上がるように破損したりするといったケースが見受けられます。
このような被害の対策としては、風の吹き込みを防止することが大切です。
スプリングやパッカーを用いた補強や、施設の基礎部分の強化をしなければなりません。
単に破損だけで済めば被害は少ないですが、浮き上がったビニールハウスが吹き飛ばされてしまうと、周囲にも被害が出る可能性がありますので注意が必要です。
妻側が奥行き方向に倒壊している場合
妻側とは、ビニールハウスの側面で幅が狭い2面のことです。
その妻側が内部に向かって奥行き方向に倒壊している場合は、強風がアーチパイプを将棋倒しのように倒したことが原因です。
この被害を防止するためには、筋交いを設置することが有効です。
この筋交いは、奥行き方向へのアーチパイプの補強はできますが、横からの風にはあまり強くないという欠点もあります。
真上から屋根が押しつぶされたように陥没している場合
周辺の地形やビニールハウスの周りに建築物など高い障害物がある環境では、強風の方向がビニールハウスの屋根の上からかかってしまうために、連棟ビニールハウスの中央部分が上から押しつぶされたようになってしまうことがあります。
このような破損パターンは数としては少ないのですが、風上側に広い河川の堤防や地形の凹凸がある場合に見受けられるものです。
このような環境にビニールハウスを建てている場合には、太いアーチパイプを奥行き方向に何カ所か設置したり、屋根の骨材を二重にすることで強度を高めたりするといった方法が必要です。また、風上側の強風を弱体化させる防風ネットを設置することも有効な手段となります。
ビニールハウスと隣接する施設・住宅などが被害を受けたとき
この記事の冒頭でも記載したとおり、ご加入の、特に民間の保険会社の保険の補償内容によっては、ビニールハウスと隣接する施設が被害を受けた場合も補償されることがあります。またNOSAI(園芸施設共済)も、オプション加入にはなりますが、附帯施設の補償ができるようです。しかし、附帯施設とは何を指すのか、どこまでが補償範囲か事前によく知っておく必要があります。
またビニールハウスの損害により、お住まい・住宅などが被害を受けた場合、住宅にかけている火災保険を使う方が一般的でしょう。
いずれにせよポイントは、「台風などの被害(強風や豪雨などの風水害)にも、ご加入の保険、住宅などの場合では火災保険が使える」ということです。
特に、火災保険はその名称から、「火災時に使う保険」と思い込みがちですが、実際には補償される自然災害は多岐にわたります。
台風被害などで、事業用施設=ビニールハウスや、ご自宅などが被害を受けてお困りの際はご相談ください。
ご加入の保険から、施設・建物の修繕費用がおりるか。また費用がおりる場合は建物修繕のご相談まで対応させていただいております。
生産者ができる簡単な補強方法
ここまでは、ビニールハウスが単独もしくは連結していたとしても周囲にビニールハウスない場合の対策でしたが、ビニールハウスが隣接し合っている場合は、少々都合が変わってきます。
というのも、ビニールハウスが複数並んでいる場合、風上棟と風下棟では被害を受けるパターンが異なってしまうことから、風上棟と風下棟では補強方法が変わってしまうのです。
一般的には、風上棟は側面が押し倒されないように、タイバーの設置や肩部分の補強対策が有効といわれています。
風下棟は上方向の負荷がかかることから、ビニールが内側から外側にむけて破裂したりアーチパイプが引き抜かれたりしないような対策が必要になります。
この場合は、基礎の埋設やラセン杭などを使用した基礎の補強が有効です。また、周辺に障害物がない場合は、ビニールハウスの周辺部分はすべて補強する対象となりますが、樹林帯や建物などで風が通過する部分が決まっている場合は、その通り道を重点的に補強することで被害を抑えることができます。
では、具体的にはどのような補強をすれば良いのでしょうか。
●風上側のビニールハウスへの補強
風上側のビニールハウスは、とにかく肩部分から屋根の破損が多くなります。
そのため、タイバーによる補強が有効となります。
タイバーを取り付ける位置は、軒から棟の高さをfとした場合、軒からf/4の位置にタイバーを取り付ける補強方法が一般的です。
このタイバーをすべてのアーチパイプに取り付けると、タイバーを取り付けていないビニールハウスよりも1.2倍以上、耐えられる風速が上がるといわれています。
また、X型で補強する場合は、同じく1.3倍以上の強度となります。
タイバーやX型の取り付け以外には、柱脚部の固定や筋交いの設置などの補強を複合的に組み合わせることで強度を増していきます。台風は事前の予報が出ますので、その台風の強さに合わせて補強を組み合わせていきます。
この補強は台風が来るとされる1~2日前までに行っておくことが望ましいです。
また、最近は肩の部分を補強する外部補強金具として、ビニールハウス専用に開発された器具も市販されているので、ホームセンターなどで探してみるといいでしょう。
●風の内部吹き込みによりビニールハウスが浮き上がることが想定される場合の補強
ずは、妻側への防風ネットによる補強を行います。妻側に近い1スパン分(2~3m)の側面部の特に風当たりの強い部分に防風ネットを張ります。
妻側は特に風を強く受けることから、破損しやすく、破損後に強風が吹き込みビニールハウスを浮き上がらせてしまうというケースが多々見られます。
このため、防風ネットで補強することで破損を防ぎます。
また、ビニールハウスの側面部分はビニールハウスバンドが強風によって緩んだり、アーチパイプが強風に揺さぶられることによる損傷が起きたりしやすい部分です。
なので、ビニールがめくれ上がったり破れたりしないように、スプリングやパッカーなどでしっかり抑えることも大切です。
肩部分の補強材と同様、ビニールハウス専用のビニールのめくれを防ぐ器具も発売されていますので、チェックしておきましょう。
また、日常的に強風が吹いている地域のビニールハウスの場合は基礎部分の強化は必須です。
風上・風下に関わらず強度を高めておくことをおすすめします。
●ビニールハウスの筋交い直管の追加による補強
筋交い直管による補強は、ビニールハウスの耐久性の強化に有効な方法です。
妻側の倒壊を防止する役目を果たすため、ビニールハウスで一番の弱点である箇所が破損しないための補強方法といえます。
筋交い直管の設置の注意点は、直管の端をしっかりと地中に埋め込むことです。
また、ビニールハウスが強風で浮き上がらないように、約 3m間隔に定着杭を設けて地盤に固定することで、さらなる強化が図れます。
このような補強は生産者自身で行おうと思えばできますが、施設業者に補強を依頼する方が確実でしょう。
施設業者は補強などのプロですので、様々な方法でビニールハウスの台風による被害を最小限に食い止める方法を知っています。
例えば、基礎近くの地盤が緩んでいる時には、ビニールハウスに上方向に負荷がかかると基礎が抜けやすくなることから、基礎部分を補強して浮き上がりを防止するような対策を取ります。
この時、定着杭やブロックなどを地中に埋め込むことで引き抜かれないような補強をします。
また、アーチ構造の骨材に組み込みを行うことも有効です。
ビニールハウスの骨材を二重のアーチ構造にすることで、強度を高めます。
補強という意味では、アーチパイプを太いものに交換したり、アーチパイプを追加したりすることも有効です。特に、強風を受けやすい妻側や、地形的に台風の被害を受けやすい位置にあるビニールハウスには有効な補強となります。
奥行き方向にアーチパイプを数本追加することでパイプの間隔を狭めることも、有効な補強のひとつです。
そして、風の通り道に防風ネットを設置することも重要です。
地形条件によっては、風が集まって風圧が高まるところが決まっているので、その部分に防風ネットを設置し、ビニールハウスに届く風圧を下げてしまうという方法です。
防風ネットを設置すると、台風が来た時に気流の流れが変わることから、風上側のビニールハウスが受ける風圧が軽減し被害を軽減出来ます。
防風ネットを設置する際は、ビニールハウスの屋根面よりも高くすることがポイントになります。
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沖縄地域における台風対策の具体的な事例
毎年、多くの台風がやってくる地域といえば、沖縄です。その沖縄では、ビニールハウスの強度を高めるための工夫を行っています。
そもそものビニールハウス本体に、太いアーチパイプを数本入れることで強度を高め、風速50m/s以上の強風に耐えられるように構造を変化させています。
また、台風の予報が出た時には、ビニールハウスの屋根部分に収納されているパイプを下ろして地面に固定できるような補強材が仕込まれています。
接合部分はアーチパイプに固定できるような構造になっていて、肩の部分が筋交いとして固定されることから、横からの強風に対する強度が劇的に飛躍しています。
そして、台風が通過した後は、作業の邪魔にならないようにまた収納できるというわけです。
沖縄地方で行っている補強は、それなりのコストがかかってしまう方法ではありますが、台風からの被害を最小限に食い止めるという意味では、有効な手段といえます。
このように、台風を多く経験している地域から学ぶことはビニールハウスに限らず、たくさんありそうです。
いずれにせよ、沖縄でも日本全国どこでも、ビニールハウスや隣接施設が台風などの被害を受けた際、ご加入の保険、住宅などの場合は火災保険で補償を受けられます。
台風対策を取ることは最重要ですが、しかし対策をとっても被害がでてしまった場合は、せっかくのご加入の保険で補償を受けるほかありません。
火災保険請求相談センターでは、ご加入の保険内容で被害の補償を受けられるか専門スタッフが対応いたしますのでお気兼ねなくお問い合わせください。
記事監修:矢島 弘子 |
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火災保険請求・地震保険請求アドバイス業務に従事。年間200棟の調査を13年間継続して行い、建物調査後の損害鑑定人との立ち合いや交渉も行っている。外部の敷地内の申請はもちろん室内の汚損・破損の申請や給排水設備の申請も得意とし、家財保険かけている方が知らないスーツのアドバイスなども行っている2021年12月3日の地震被害はあり、関東圏であればどこでも無料点検はすぐにご依頼ください。損はさせません。 |